そろそろ堪え切れない想いが目の奥の痛みを生み出し、その限界がすぐそばまで来てしまうほど苦しい。


だから自らに沁み込んでいるクセに則って、この場を無言で逃げ去ることを選んだ。


奥歯を噛みしめつつ俯いていた私は、テーブルへ手をつき勢い良く立ち上がった。


そのまま襖の戸へ向かおうとしたところ、後方からグッと阻むように引き寄せられて硬直する。



「逃がしませんよ」

そうあっさり吐き捨てれば、逞しい腕の力が増したことに気づいた。それでもなお、着物姿の私を気遣いながら優しく抱き寄せるロボット男。



こんな温情をけしかけてくる彼に、酷い男だとハッキリ言って今度こそ逃げてしまいたいと思うけども。


距離を置こうとすればソレを易く阻まれ、さらに強まった腕の力に鼓動は一向に鳴り止まない。


ふわりと鼻腔を掠める香りもまたドキドキと胸が高鳴るから悔しくて…、本当はとにかく逃げたいというのに。



「…離してよ」

「聞き訳がありませんね」

「…どっちが、」


「先ほどの彼は良くて、なぜ俺は受け入れないんです?」


身勝手すぎる言葉に一層苛立ちの募った私は、カッときた心を宥めることに必死で無言を貫いていた。