納得したように無表情で背を向けられ、またひとつロボット男との間の壁が明白になるから一抹の寂しさが取り巻いた。



玄関先でまた私にだけ無愛想なメイドもどきさんに見送られ、自宅マンションへと走る車に揺られる。


シンと静まり返った車内の空気は、行きの時よりさらに酷いものだ。あまりに重すぎて、着物姿でいることの疲れがどっと増すわ。


こう相も変わらず何を考えているのか分からない専務と、虚しく2人きりで過ごす時間は苦しいものだけど。


これは間違いなく、どこまでも埋まる筈のない距離をほんの少しでも埋めようとしたバチが当たったと思うしかない。



愛より何より、普通である生活維持のために“目先のお金”を得る生活を選択したのは、他でもない私なのだから…。



「ご実家への連絡は?」

「・・・いえ、」

エンジン音を響かせて走行後ようやく生まれた会話は、こちらにとってさらなる息苦しさを増すだけのもの。


「何故ですか?」


こうして不躾に投げかけられた疑問符は、やけに弱気な心を打ち砕く材料としては最高なものであった。



そもそも偽の婚約関係を報告したところで、実家には何らメリットは無いだろう――いや、むしろ迷惑がるに違いない。