“一切の干渉はナンセンスです”発言を思い出すたび、あの場で爆発しなかっただけ御の字だ。


さっきの部長のお呼び出しの件も、“緒方さんのお陰で鼻が高いよ”とか…知らないよ。


普段ほぼ関わりのない上司に初めて褒められた件が、まさかの婚約とは嘆くばかりだ。


もう私だけを置き去りに、2日間のウチに話がどんどん飛躍しているから恐ろしい…。



「出会いはどうであれ。専務は“怜葉”を選んだんだし、良いじゃない」

素晴らしくお気楽発言な彼女は、熱々のクロックムッシュを頬張り窺って来るから。


「えーえー…、ヤツは抜かりない。
もうお気楽OLでいられないよ。ああ、お先真っ暗だ…!」

やけ食いするしかないと、パニーニを手にしてガブリと豪快にかぶりついてみせた。


「そんな絶望する事ないでしょう」

「…どこに希望の光が?」

しかし今さら婚約解消すれば、私の居場所だけがドコにも無くなる事は明白すぎる。


「ほら!玉の輿とか?」

「お金なんか…」

「そう言って、お金に困っていたのは誰だった?」

あの男をまだ褒め称える彼女に難癖をつければ、案の定その件をグサリと突かれた。


「・・・由梨、キツいね」

「だって、怜葉が居なくなるのは勘弁だもん」

「それはありがと…」

嬉しそうにニッコリ笑われても、この道が正しかったのかはまったく分からないが。


だいたい元をたどれば、すべての原因を作ったのは、数日前からボヤきまくりの私なのだ。