なにをどう取り繕ってみても、結局は嘘のひとかけらも紡ぎ出せない。
それでも笑顔を見せ、この場を穏便に逃げきろうしている私は卑怯だ。



すっかり食欲など失っていたが、目の前のフロマージュ・ケーキを惰性で口へ運んでいるのも然り。
おばあちゃんの悲しそうな目を、これ以上見たくなかった。



「怜葉…、いま幸せかい?」

「うん、…すごく」


「それなら、ええよ。
その一言で十分だわ。おばあちゃん安心したよ」

だけども、わずかに間の開いた私の返事をウソと察したかもしれない。いや…、あれは間違いなく見抜かれていた。



かくいう私だって、本当は分かっていたの。あれほど可愛がってくれたおばあちゃんから、一切“おめでとう”の言葉が出なかったことに。


きっと今日やって来た時点で、何かしら感づいていたのだろう。
心の底から笑えていない孫が、婚約の話に及ぶと途端に口を濁すものだから。


それでも必死の強がりをする私に、何を思ったかは到底計り知れないが。
またしても心配させるばかりで、いったい幾つになれば孝行が出来るのだろうか…。




幼い頃から私の意見を聞き入れた時は必ず、いつも一歩離れたところから見守ってくれたおばあちゃん。


その当時あれほど避けていた東京へ戻り、そのまま働き出すとは夢にも思わなかっただろう。


独り暮らしを始めた時から今まで、定期的に送ってくれた食料や自筆の手紙に何度励まされたことか。