きせき



「ほら、ちゃんと掴んどけよ。それにしてもコイツ、すっげー力だな」

――あれから……。

一瞬で土手を駆け下り、バウの元へ駆け寄ったその人は、

「もうちょっとで、川に入りそうだったぞー」

そんな事を言いながら、私の目の前で、泥だらけになったジャージの裾を捲り上げた。

何が起きたのか理解し切れず、ボーっとする私の目の前で「おーい」なんて言いながら、手をヒラヒラさせたあなた。

「……あっ!! ごめんなさい!!」

「いや。……んと、バウ?」

バウを指差して、少し首を傾げたその人は、私の顔を覗き込む。

「う、うん」

「無事で良かったな。お前こんなちっこい女の子を引っ張り回すなよー」

そう言ってにっこり笑って、バウの頭をわしわしと撫でまわす。

ちっこい女の子……。

私、これでも21歳なんですけど。

心の中で突っ込みを入れながらも、目の前のその男の人をそっと見上げた。

いくつくらいだろう? 私と同じ歳くらいかな?
背がすっごい大きい。
体格も良くて……暗くていまいち見えないけど、なかなかカッコ良さそう?

でもまぁ、もう逢う事もないだろうという思いから、年齢を訂正する事もせず、

「あの、ごめんなさい。泥だらけになっちゃって……。ありがとう」

そう言って頭を下げた。