きせき


「おっはよ! てかアンタ、何してんの?」

そう言いながら隣の席に腰をおろしたのは、宮本 朱美《みやもと あけみ》――通称“あけちゃん”。

「ん~? 何って、センセー来るの待ってるんでしょ?」

今日は朝イチから講義があって、大講義室の中腹辺りの席に座っていた私は、少しボーッとする頭のまま、あけちゃんを見上げる。

「いやいや。そうだけど、そこじゃない。私が聞きたいのは、美青の行動ね」

――“私の行動”?

跳ね上げ式のイスの座席を下ろして、着席しながら、どこか呆れたように告げる彼女に首を傾げた。

「朝から何言ってんのあけちゃん。意味わかんないよー」
「スマホ」
「……スマホが、どしたの?」
「私、10分くらい前にここに着いて、さっきまであっちでサヨと話してたんだけど」

そう言って、後ろの方を指差す。

「え~、そんな前から来てたなら声かけてよ。淋しくひとりぼっちだったじゃん」

けれどあけちゃんは、普通にそんな返しをした私に、思いもよらない言葉を口にした。

「アンタさぁ、ずーーっとスマホばっか見ててさぁ。すっごい怪しかったんだけど」

顔を顰めて、訝しげに私を覗き込んだ彼女のその顔に、一瞬動きが止まる。

「……えぇっ!? ホントに!?」
「うん、ホントに。サヨなんて回数数えてたよ」

そう告げた後「確か23回とか言ってた」と、不必要な申告までして。

「で、何してたの?」
「いや、別に何でも……」

――ホントは、自分でもわかってる。

私は普段はスマホなんてカバンの中にしまいっぱなしで、気が付くとバッテリーが切れかけてる――なんてこともあるくらい、それを必要としない人間だったりする。

それなのに、ここ数日は気付けばスマホを手に持っていて……。

気にしないようにしながらも、宮崎航太からの連絡を待っている自分がいるんだ。

――今日で3日。

彼に「連絡する」と言われてから、音沙汰もないまま、もう3日が経とうとしていた。