「ありがとうございました」
家の前で車を降ろしてもらった私は、お兄さんに向かって頭をペコッと下げる。
「いえいえ。楽しかったよ。じゃーまた……」
そう言って手を上げたお兄さんにもう一度頭を下げ、玄関のドアノブに手をかけた、その時――……
「美青ちゃん」
お兄さんに呼び止められ、ゆっくりと後ろを振り返った。
「はい」
「兄の俺が言うのも何だけど」
「……」
「航太、いい男だよ」
優しくにっこりと笑って、まるで私の気持ちを見透かすように、口にしたその言葉。
「……はい」
それは、何となくだけど解る。
「それに、将来有望だしね」
目を逸らすことなくそこまで話し、「じゃ、お休み」と、また手を振ったお兄さんの車が、ゆっくりと走り出す。
私は、ぼんやりとした頭のまま、そのテールランプが見えなくなるまで玄関先に立ち尽くしていた。

