きせき


宮崎航太がスタジアムに姿を消してから、お兄さんに促されて車に乗り込んだ。

「ご面倒おかけして、すみません。お願いします」
「いえいえ。気にしないで」

キーを回し、エンジンをかけて「さて……。とりあえず、大通りに出ればいいかな?」と、車を発進させたお兄さん。

その横顔を、ぼんやりと見つめた。

確かに、似てる。

思い出したのは、泣いている私の隣で、空を見上げていた宮崎航太の横顔。

今日は本当に色んなことがあり過ぎて、未だに頭が混乱していて、そんな私を気遣うように、お兄さんは優しい声で話し始めた。

「うちの弟がごめんね。せっかくの休日に」
「……いえ」
「色々と」

――ん?

“色々と”

その言葉を聞いて、さっきまですっかり忘れていたことを思い出した。

そういえば私、キスされそうになったんだ……。