きせき


「夕飯は?」

部屋に入ってソファーに腰掛けた私に、航太が声をかける。

「あー、食べてないけど……」

「“けど”?」

「後でいいや」

「……わかった」

そう言った航太は、一旦キッチンに行くと、珍しくホットミルクをいれてくれた。

「珍しいね」

「ん? 何が?」

「ホットミルク」

「あぁ。空きっ腹にコーヒーってキツくねぇ? 俺、すげー腹痛くなるんだけど」

「……航太って、そういう無駄なところが意外とデリケートだよね」

「無駄って何だよ」

マグカップに口を付けた私を見ながら、いつもと変わらない様子で“くくくっ”と笑う。

――でも。

「ふー……」

大きく息を吐き出すと、真剣な顔で私の目を真っ直ぐ見つめた。

「美青」

「うん……」

「話、してもいい?」

「うん」

笑みを浮かべた私に、優しい目を向けた航太が、言葉を選ぶようにゆっくりと口を開いた。