「航太君は……何か言ってた?」
「移籍のことは何も」
「そうなんだ……」
「ただ、“俺の言葉だけ信じて”って」
「そっか」
そのままお互い口を開くことなく、またしばらくテレビを眺める。
――海外への移籍。
ワールドカップでの航太の活躍は、日本中はもちろん海外でもすごく評価が高かったから、こういう話も出るんじゃないかって、心のどこかで思ってはいたんだ。
しかも、まだ報道が事実かはわからないけれど……。
そこに名前が挙げられているチームは、サッカーにそこまで詳しくない私でもよく耳にするようなところばっかりで。
「もし、」
「え……?」
急に口を開いた私に、あけちゃんは少し驚いたような顔を向ける。
「もし移籍の話が本当だったら、嬉しい」
「……」
「航太の頑張りが認められたってことだもんね」
「うん」
「ホントに、嬉しい……」
「美青?」
「けど……っ」
こんなこと、言っちゃいけない。
だって私はいつでも、誰よりも、航太のサッカーを応援していたいんだ。
それなのに――……
「また離れるのは、やっぱり淋しいなぁ」
零れ落ちてしまった、私の本音。
「美青……」
「ごめん。なに言ってんだろ、私」
慌ててその発言を無かったことにしようとした私に、あけちゃんは少し考え込んで、俯く私に思いもよらない言葉をかけた。

