きせき


航太と駅で別れたあと、ポケットのスマホが小さく震えていることに気が付いた。

液晶を見ると、そこには“宮本朱美”の文字。

一度深呼吸をして、

「もしもしー? あけちゃん?」

できるだけいつものように、そう口にした。

――それなのに。

『美青?』

「ん?」

『……泣いてるの?』

あけちゃんは嫌になるくらい、本当に何でもお見通しなんだ……。

「泣いてはいない、かな」

『……』

「でも……」

航太には“大丈夫だから”なんて言ったけど。

何が起きているのかがわからない私の手は、小さく震えていたんだ。

言葉に詰まる私にあけちゃんは、

『うち、おいでよ! ちょうど暇してたんだぁ』

と、何事もなかったかのように、元気よく声を掛けてくれた。

あけちゃんの家に着くとテレビが点いていて、そこで初めて、航太が言っていた言葉の意味を理解した。

あけちゃんの家のテレビには――……

“全日本代表・宮崎、海外移籍を熱望”

“チームが本格的な話し合いを始める”

そんなテロップが出され、コメンテーターが好き勝手なことを言っていて。

あけちゃんが淹れてくれたレモンティーを口にしながら、その騒がしい画面をボーっと眺めていた。

航太の話を聞くまでは、なにも鵜呑みにできないしなぁ……。

そんなことを考えていた私に、あけちゃんが聞き辛そうに声をかける。