きせき



「今日もお疲れさん。……って、お前なんでウーロンなんだよ!!」

俺の正面には、楽しそうに笑いながらビールのジョッキを持ち上げる後藤さんが座っている。

あれから、個室のある居酒屋に移動した俺達は、注文した飲み物と料理を前に乾杯をしていた。

「俺、酒苦手なんすよ……実は」

そう言って笑う俺に、後藤さんも笑いをかみ殺す。

「“実は”じゃねーよ! 知ってるよ!!」

後藤さんと、こうやってメシを食いながらゆっくり話をするのは、本当に久しぶりだった。

この人の気を遣ってないフリをして、実はかなり気を遣ってくれる、そういうところをやっぱり尊敬してしまう。

――店に来て、40分は過ぎた頃。

移籍のことは何も聞かず普通の話ばかり続ける後藤さんに、俺はゆっくりとその話を切り出した。

「後藤さん、移籍の話なんですけど」

「あぁ……」

「正直、自分がここまで情けないヤツだとは思わなかったんですよ」

「……」

「あんなにすごいチームが俺の実力を認めてくれて、本当に嬉しいはずなのに……」

そこで言葉に詰まった俺に、後藤さんは特に何も言うこともせず言葉の続きを待ち続ける。

「俺、我儘なんすよ」

「お前が?」

「はい」

「……」

「世界でサッカーもしてみたい。でも、このチームにもっと恩返しがしたい。それにあいつだって……手放したくない」

「……」

「信じられないくらい、我儘なんすよ」

ザワザワと外の音が流れ込む個室で自嘲的に笑って俯いた俺に、後藤さんがゆっくりと口を開いた。

「航太」

「はい」

「それは、“我儘”とは言わねぇんだぞ」

「――え?」