――安原さんから、移籍の話をされた数日後。
「航太、安原さんに聞いたぞ」
練習のあと、シャワーを浴びて着替えていたら、後藤さんにそう話しかけられた。
「……さすがミスター横浜」
ポソリと呟いた俺を、片眉を上げながら“それ、関係ねぇし”と言って笑った後藤さん。
後藤さんは高校を卒業してからずっとこのチームにいて、ここにはなくてはならない存在で。
サポーターからは“ミスター横浜”なんて呼ばれて親しまれているし、フロントからの信頼も絶大だ。
だから、そんな後藤さんが俺の移籍の話をフロントから聞いていても不思議ではない。
「で、どうすんだ?」
「まだ考え中です……」
歯切れ悪くそう答えた俺に、後藤さんが何かを言いかけた時、ドヤドヤと、他のチームメイトがロッカールームに戻ってきた。
「航太、たまにはメシでも食いに行くか」
何もかもお見通しで笑う後藤さんに、俺は自分の気持ちを聞いて欲しいって……
やっぱりそう思ってしまった。

