きせき


「さて、何からお前に話そうかな……」

正面の椅子に腰かけて、肘をテーブルに付いたまま手を組む安原さんが、ゆっくりとその口を開いた。

「実はな、航太」

「はい」

「お前に、いくつかのチームからオファーがきてるって話、」

「……」

「あれは、本当だ」

「え……?」

驚きの声を上げた俺の心の中を覗き込むように、安原さんは俺の目を見つめる。

「あの番組で流れてた三つのチームと、あともう一箇所」

「……っ」

その番組で名前が挙がっていたチームは、どこもヨーロッパの強豪チームで。

俺は思わず息を呑んだ。

それと同時に、驚きと戸惑いと、微かな喜びで胸の辺りがざわめき出す。

「本当は、もっと前からきてた話だったんだ。でも――……」

そこで一旦、言葉を切った安原さんは、

「こっちとしては、お前に抜けられるのは、正直痛手だ」

俺の目を見据えたまま、そう言った。

「だから、オーナーも交えてしばらく話し合いをしていたんだ」

「……」

想像もできなかった、自分の身に起きているその話に、俺はただ驚くだけで何も言えずにいた。

「で、昨日その結論が出て……。お前に伝えようと思った矢先に、ニュースにされちまってな」

「そう……だったんですか」

「あぁ……」

一度大きく息を吐き出した安原さんが、ゆっくりと俺の名前を呼ぶ。

「航太、」

「はい」

「お前、FCバルセロナ行くか?」

「え? バル……セロナ?」

それはスペインの、リーガ・エスパニョーラの中でも名門の強豪チーム。

「あぁ。あそこが一番条件がいいのと、何より、一番お前の能力を認めてくれている」

「……」

「俺達だって一押しの選手を出すんだから、きちんとお前を理解してくれるチームに送り出したいんだ」

安原さんは、まるで自分のことのように嬉しそうに、だけどどこか淋しそうに笑った。

俺はその目の前で、突然降って湧いた嬉しいはずのその話を、どこか遠いところで聞きながら――……

無意識のうちに、美青の笑顔を思い浮かべていた。