きせき


「すみません。どうしたんですか?」

『あぁ……』

何やら口ごもる安原さんに、少し嫌な予感がした。

『航太、最近どっかの記者と移籍の話したか?』

「え?」

――この前のあいつのことか?

『テレビ、見てみろ。12チャン』

そう言われた俺は、わけがわからないままテレビを点けて、言われた通りチャンネルを12に合わせる。

「何だ、これ」

その画面に向かって、思わずそう呟いてしまった。

番組は、何でもないワイドショーだったんだけど……。

問題は、その内容。

その中で、どうやら俺は、今のチームを辞めて海外に移籍することを希望しているらしく、更に、海外のいくつかのチーム名が挙げられ、それらが俺にオファーを出しているらしい。

『安原さん……俺、言った覚え……ないです』

『あぁ、分かってる』

「じゃー……何で?」

心臓が、ドクドクと嫌な音を立てる。

『あいつらは、言葉尻を捕らえるのが得意だからな』

そう吐き捨てた安原さんの言葉に、握る手に力が入った。

『航太、今からこっちに来られるか?』

「……はい」

――何で、こんなことに。

電話を切った俺の心の中に、悔しさなのか、怒りなのか、よく分からない気持ちがこみ上げて。

微かに震える指先。

「はぁー……」

自分を落ち着かせるために大きく息を吐き出した瞬間、すぐ横で、寝室の扉がスーッと開いた。