きせき


「移籍ねぇ……」

ロッカールームで練習用のユニフォームに着替えながら、ふとさっきの記者の言葉を思い出していた。

――海外への移籍。

正直、海外で自分の力を試したいと、そう思う気持ちは確かにある。

それに、もっといろんなプレーを肌で感じたいとも思う。

だけどそれは俺だけの問題じゃなくて。

俺を求めてくれる海外のチームがあって、更に、今のこのチームのフロントがOKを出さない限り、それは難しい。

それにやっぱり、美青のこともあるしな。

「はぁー……」

別に移籍の話があるわけでもないのに、なぜか大きな溜め息を洩らした俺に、

「よぉ、航太!! 久しぶりだなっ!!」

後ろから声をかけたのは、相変わらず元気な後藤さんで。

「後藤さん。ご無沙汰してました」

そんな返事をした俺を見ながら、何やら楽しそうに笑っている。

「こっちはテレビで毎日見飽きるほどお前の顔見てるから、全然ご無沙汰な気分じゃねぇよ」

「あー……すいません。不可抗力です」

そう言う俺に、またニヤニヤした顔を向けた。

まぁ、次に言われることの想像はつくけど。

「それにしてもお前、すげぇことしたぁ」

「若さだな!!」なんてことを言って、また俺をからかうから、俺は何も言えなくなる。

「おっ、航太。ポーカーフェイス崩れてるぞ」

「後藤さん……、ホント勘弁して下さいよ」

だけど、苦笑いをして頭を掻いた俺に、後藤さんは思いがけない言葉をかけたんだ。

「よかったな」

「え?」

「あの子なんだろ?」

「……はい」

恥ずかしさよりも嬉しさの方が勝って、後藤さんの目を見ながらそう返事をした。

そんな俺に後藤さんは、

「よかったな」

もう一度そう言って、目を細めながら優しく笑ってくれた。