きせき


「宮崎選手!!」

ワールドカップが終わって自分が在籍するクラブに戻った俺は、クラブハウスの前で知らない男に声をかけられた。

「……はい」

その男は、多分マスコミ関係の人間。

「ワールドカップ、本当に楽しませてもらいましたよー! ありがとうございました!」

そう言って、にこやかに笑いながら近寄って来た男は、

「ところで――……」

ゆっくりとそう口にして、その話を切り出した。

「海外のいくつかのチームから、移籍のオファーがきてるって聞いたんですけど……」

結局、聞きたいのはそれか。

「チームのフロントも何も言っていないですし、俺の方にもそういう話は届いてないですよ」

「そっかぁー……。でも、もし移籍の話がきたらどうします?」

「その時はその時でまた考えますけど、今はそこまで考えてないです」

後から考えたら、この言い方がまずかったのか……。

「そうですか、わかりました! 練習頑張って下さいね」

そう言って、その男は満足げに笑いながら去って行った。

――そのことで後々なにが起こるなんて、その時の俺は知る由もなかったんだ。