きせき


髪も、肌も濡れたまま。

潤んだ瞳を向ける彼女の唇に、何度も何度も噛みつくようなキスを落とすと、小さく漏れる甘い声。

その声に――……

“優しくしたい”と思うのに、“壊してしまいたい”なんて、矛盾した感情を抱く自分がいて。

そんな俺の心に気付いたのか、俺の胸を震える手でそっと押した美青にハッとした。

――だけど。

「ちょっと緊張してるだけ」

そう言って目を伏せて、恥ずかしそうに笑うから。

「俺も」

恥ずかしい本音が漏れてしまう。

愛しくて、

愛しくて。

「美青……」

もっともっと、俺を感じて欲しくて、彼女を感じたくて。

優しく響く、その名前を何度も呼ぶ。

俺の腕の中の美青が、静かにその頬を涙で濡らすから、

“もう、ひとりで泣かなくていいよ”

大人ぶって、そう言いたかったのに……。

「もう……離れないで」

俺はそんな言葉を口にしてしまったんだ。

でも、美青がいないとダメなんだ。

あの日、あの海岸で、俺がいないとダメだと言った美青。

――でも違うよ、美青。

ダメになるのは、俺の方だ。

情けないくらい、俺には美青が必要なんだ。