きせき


「みーおー?」

「……はぁい~?」

浴室から響く航太の声に、誤魔化すような返事をしたら、

「いい加減、諦めろって」

バタンと音を立てて、開いた扉から航太が笑いながら顔を出した。

「ちょっ……!! 開けないでよっ!!」

「……まだ脱いでねぇの?」

「もうちょっと、決心がつくまでお時間を……」

「それ、どのくらいかかる?」

呆れたように、そう聞く航太に、

「30分くらい?」

視線を逸らしながら答えた。

「えっ!? ちょっと!!」

私のその回答が気に入らなかったのか、航太はジロリと私を睨んだあと、

「のぼせる。無理」

ただそれだけを口にして浴槽から立ち上がると、ずぶ濡れのまま、また洗面所に戻って来た。

しかも、思わず視線を逸らした私に、

「脱がないなら、脱がすけど」

そんなとんでもない一言を言い放つ。

「えっ!! いいよっ、いいです!! 自分で脱ぎますっっ!!」

私はというと、伸ばされた航太の腕をバタバタかわしながら慌ててそう口にする。

「3分以内に来なかったら、電気点ける」

「えっ!?」

「嫌だったら、早く来ることー」

どこまでも一枚上手の航太は、楽しそうに笑って、また浴室に戻っていった。

「くそぅ……」

ワタワタする自分と、なんだか余裕の航太とのこの温度差が悔しい。

「はぁー……」

大きな溜め息を一つ零し、観念した私は、ゆっくりと服を脱ぎ、それを無駄にきれいに畳んで時間稼ぎをすると、

「航太ぁー」

浴室にいる航太に声を掛けた。

「んー?」

「目」

「は?」

「目、つぶってて」

ちょっと不貞腐れたようにそう言うと、航太はいつものように“くくくっ”と笑って。

「はいはい」

呆れたように、そう返事をしたんだ。