きせき


「電気、消して?」

そう呟いた私の小さな声が響いた。

「……」

「お願い、航太」

懇願するようなその言葉に、フッと笑った航太が電気を消す気配がした――……。

「随分と魅力的な言葉に聞こえるなぁー」

その暗闇の中で、“くくくっ”と笑う。

「だって、約束したじゃん!!」

「したけど、まさか本当に守ってくれるとは思わなかったし」

「えっ!? そうなのっ!?」

「おー。まぁ、とりあえず入らない?」

「……向こう、向いててっ!!」

「はいはい。じゃー先入ってますねー」

背後でゴソゴソと服を脱いでいる音が聞こえて、その気配は、そのままパタンと音を立てて開いた扉の中に入っていく。

「はぁー……、もうヤダ」

泣きそうになりながら、大きな溜め息を吐いた私がいるのは……

航太の部屋の洗面所。

あれから私をパッと離した航太は、

「じゃー、こっちの約束も守ってもらわないとなぁ。……風呂沸かしてこよー」

なんて言葉を残し、鼻歌を歌いながらバスルームに消えていった。

それから散々、他のものに変えて欲しいとお願いしたのに、それらをことごとく却下した航太は、私の背中をポンポンと叩いて。

「ほらっ、早く!!」

と、洗面所に私を押し込んだんだ。

「別にいいじゃねぇかよー」

つまらなそうにそう言う航太を説得して、何とか電気を消させた私だったけど……。

「やっぱり無理じゃないっ!?」

ひとりで頭を抱えて、その場にしゃがみ込む。