きせき


・・・
・・・


“カチャリ”とカギが回った音と、扉が開く音が部屋に響いた。

「ただいまー……って、電気点けろよ」

テレビだけが点いている真っ暗なリビングに入った瞬間、着ていた上着を脱ぎながら笑った航太。

「……」

「美青?」

そう呼びかけた航太に、私はゆっくりと近づく。

「どうした?」

まるで何事もなかったみたいに、そんな風に首を傾げて私を見つめるから。

「航太……」

私は航太の胸に顔を埋め、ゆっくりとその背中に腕を回した。

「美青?」

「……」

「……何かあった?」

心配そうに声をかけて、私をぎゅっと抱きしめる。

その腕の中で、頭を横に振った。

「んー、泣ける映画でもねぇしなー……」

泣いている私に気が付いて、そんなことを言いながら、私の髪をゆっくり撫でる。

「どうした?」

「……嘘つき」

「え?」

「今日、練習なんてなかったんでしょう?」

「……」

「明日、映画に行きたいっていうのも……嘘?」

私のその声を聞いて、テレビに視線を向ける航太の気配がした。

「――ごめん」

「……なんで、謝るの?」

「嘘ついたこと、あと、勝手なことして……ごめん」

「……」

「テレビ、見たんだろ?」

「うん」

「そっか……」

私をその胸からそっと離した航太は、ちょっと困ったような顔をして笑う。