きせき


日本に帰ってからの航太は、本当に忙しそうだった。

テレビを点ければ、必ず航太の姿が見られちゃうくらい色んな番組に出る航太は、相変わらず無愛想。

さすがに、首相官邸に報告に行った時は、ちょっと笑ってたけど……。

私も私で、溜まっていた仕事を消化するのに必死な日が何日も続いていて、帰国して数日が経った頃、部屋でゴロゴロしながら雑誌を読んでいた私のスマホが鳴った。

「……」

手に取ったスマホには、しばらくの間、表示されることのなかったその名前が表示されていて。

「もしもし? 航太?」

『おー。今、平気?』

久しぶりに聞いたその声に、心臓の鼓動はやっぱり速くなる。

「うん、平気!」

『ごめんな、なかなか連絡できなくて……』

「ううん、大丈夫! だって、毎日テレビで顔見てるし! 大変なのはわかってるよ」

クスクスと笑ってそう答えると、ため息と共に、

『テレビとか、マジで勘弁して欲しい』

そんな、ゲンナリしたような航太の声が聞こえた。

『美青さ……明後日、仕事ある?』

「え? 明後日?」

まだ笑い続けていた私は、突然投げかけられたその質問に少し驚いて、

『おー』

「明後日は、休みだけど」

『そっか。明日は?』

「明日?……明日は普通に仕事だよ」

「8時前には終わると思うけど」そう付け足すと、航太はなぜか黙り込んでしまった。

「航太? 聞こえてる?」

『聞こえてる』

「……」

だったらナゼ黙り込む?

何やらおかしなテンションの航太に、首を傾げると、

『明後日、映画行こ』

「は?」

やっぱりどこかおかしい彼は、そんなよくわからないことを言ってくる。