きせき


「航太ぁーー!!」

「……」

「おい! シカトすんなっ!!」

「……何だよ」

ピッチを後にして、ロッカールームに向かおうと歩き出した俺を、稜がバタバタと追いかけてくる。

「マジでビックリしたんだけど!!」

「何がだよ」

稜の方を向くことなく、歩き続けながらそう返事をする。

「航太、彼女いたんだなっ!! みんなすっげー驚いてたよ!!」

「……悪かったな。こんな時に、あんなこと言って」

「いやいや。驚いたけど、何かカッコ良くてムカついた」

やっぱりいつも通りテンションの高い、イヌコロみたいな稜は、そんな言葉を口にしながら楽しそうに笑った。

「てかさ、彼女来てたなら紹介しろよ~」

「……」

「ん? 航太?」

「稜、悪い」

「え?」

「先戻ってて」

前を見つめたまま、そう言った俺の視線の先には、

「美青……」

子供みたいに、涙で顔をぐちゃぐちゃにする美青の姿。

「え? 美青……ちゃん?」

驚きの声を上げる稜の横をすり抜け、泣いている彼女の前で足を止める。

「美青?」

「……」

俺の呼びかけに、美青は何も言わず下を向いてしまって。

さらりと揺れた髪に、手を伸ばそうとした瞬間――……

「なに……あれ……っ!!」

パッと顔を上げ、ちょっと怒ったような顔でまたポロポロと涙を流すから。

「泣くなよ」

「泣かせてるのは……航太でしょ!?」

「そっか」

こんな時でも強気な言葉を口にしている美青に、不謹慎だと思いながらも、笑いが漏れてしまったんだ。