霧が立ち込めるスタジアム内は、不思議な空気に包まれていた。
大きな声援が響いているのに、そこにいる全員が息を呑み、まるで重圧に耐えているような、そんな感覚。
苦しそうに、だけど必死にピッチの上を駆け回るみんなの姿に、何度も何度も立ち上がり、ゴールを狙う航太の姿に……
どうしても視界が滲んでしまう。
でもこんな所で泣いてなんていられないから、唇を強く噛みしめて、胸の前で握った指にギュッと力を込めた。
だけど、目の前では航太が時間ギリギリに放ったシュートが無情にもゴールを外れ……。
それと同時にレフェリーのホイッスルが響き渡る。
その瞬間、スタンドの観客がざわついた。
「PKか」
誰かが呟いたその言葉に、思わず息を呑む。
「佐々木さん、PKだね……」
「……はい」
隣の佐藤さんも、心配そうにピッチのイレブンに視線を送っていて。
「大丈夫です。絶対に」
私は不安を振り払うように、そう呟いた。
「そうよね。私たちが信じないでどうするのよね!」
隣に立つ佐藤さんの笑顔に、ピリピリする心がほんの少し癒される。
真っ黒な雲が立ち込める暗闇の中、唯一光を放つのはピッチの上だけ。
私の視界には、円陣を組む仲間の姿があって、肩を組んでいる腕に一度力を込めると、全員がゆっくりと身体を起こす。
――その表情に、鳥肌が立った。
頑張れ。
頑張れ……。
ドクンドクンと騒ぐ心臓を抑えるように、もう一度手に力を込める。
「どんな順番で出すつもりなんだろうね……? やっぱり宮崎君とかは最後の方なのかな……」
隣では、やっぱり落ち着かない様子の佐藤さんがそう呟いていて。
航太――……。
ゴクリと、自分の喉が大きく鳴る音が聞こえた。

