きせき


怒号のような歓声が響く中、続けて相手国のキッカーが放ったボールは、森田さんの指をかすめながらもゴールに吸い込まれ――……

両チーム合わせて9人蹴って、得点は4-4。

俺が得点することで、ベスト4進出が決まる。

だけど外せば……その大きなチャンスを潰すことになるんだ。

今までに感じたことのない程の重圧に、指先が少し冷たくなる。

「航太っ!! 勝つぞ!!」

仲間たちの想いを背中で感じながら、俺は、ゆっくりとペナルティーエリアに立った。

勝ちたい。

――“絶対に勝って”

俺の気持ちと重なって、昨日の美青の言葉が頭の中に蘇り、思わずスタンドに目を向けた。

「……」

やっぱり俺ってすげぇかも。

だってさ、どこにいたって、こうして見つけられる。

さっきまで嫌な音を立てていた心臓が、ゆっくり、ゆっくりとその音を変えていく。

最後に胸に残るのは、優しくトクトクと心地よく響く音。

こんなにも、たくさんの人でごった返すスタジアム。

見上げた俺の視線の先には、両手を胸の前で握りしめ、泣きそうな顔で俺を見つめる美青の姿があった。

――変わらないな、美青。

昔、俺が試合で追い込まれたり、思い切り倒されたりする度に、泣きそうになっていた美青。

“泣きそうになるなら、見なきゃいーのに”

笑いながらそう言った俺を、ギロリと睨んだ美青は、

「なに言ってんの!? 私が一番航太を応援してるんだから、その私が見ないなんてありえないでしょ!?」

そう言って、俺の胸元を、拳を握った小さな手でボカッと殴ったんだ。

俺の視線に気付いたのか、一瞬目を見開いた美青。

すると、その顔がますます泣きそうな顔に変わっていくから、緊張していたことも忘れて笑ってしまった。

「ばぁーか、心配すんなよ」

笑いながら小さくそう呟いた俺は、ゆっくりとキックマークの上にボールを置く。

大きく息を吐き出しながら、見上げた空。

さっきまでそこを覆っていた真っ黒な雲は、いつの間にか薄くなり――……

その隙間から、月の光が差し込んでいた。