「だーもーっ!! 何なんだよ!!」
「稜」
「んだよっ!!」
「落ち着け」
「わかってるよっ!! でもどう考えたってあのレフェリーおかしいだろ!?」
「……まぁな」
「あんなのカード出るだろ!!」
――決勝トーナメントの1回戦。
「大体あの時の航太に対するファールだって、PKだろ!? 何でフリーキックなんだよ!!」
前半戦が終わったロッカールームで怒りをあらわにする稜は、ドカッと俺の隣に腰を下ろした。
前半45分が終了した時点で、得点は1-1。
フェアじゃないことが大嫌いな稜は、相手のラフプレーと、偏ったレフェリーのジャッジに、普段の穏やかさを微塵も感じさせないほどブチ切れている。
「お前、何とも思わないのかよ!?」
「あー? 思うよ」
「だろっ!?」
「おー。“そこどけてくんねぇかなぁ”って」
「はぁっ!?」
「いや、あのレフェリー、何回もシュートコース塞いでてよー。マジで邪魔」
俺がボールを貰って振り向くと、シュートコースのど真ん中に立つレフェリー。
しかも、一度ならまだしも三度も。
「そっちかよっ!!」
俺の正直な意見に、思いっきり突っ込んだ稜は、
「もういい……。お前と話してると、怒りの気持ちも失せる」
ため息交じりにそう言って、項垂れた。
よしよし。
単純な稜には、この戦法が一番いい。
確かに相手の国のプレーは荒くて相当酷いし、レフェリーも、正直あまり見えていない――というか、かなり怪しいと思う。
でも、そんなことに無駄な神経を使うくらいなら、自分のプレーに集中すべきだと俺は思うから……。
「稜」
「はいー?」
「お前はちゃんと動けてるよ。だからそのまま後半の集中力切らすなよー」
「……わかってる」
これだけで俺の言いたいことがわかる稜とは、悔しいけれどやっぱり組みやすい。
「さて、行きますか」
「よしっ。頑張るべっ!! 打倒レフェリー!!」
握った拳で太股を何度か叩いて立ち上がると、後半戦開始を待つサポーターが大きな歓声を上げるピッチに向かったんだ……。

