きせき


「ごめん」
「……」
「からかうとか、そんなつもりは全然なくて、本当に。ただ、」

そう言ったっきり、口を閉ざして下を向いた宮崎航太。

――何なのよ……。

しばらく待ってみたものの、それから彼はなにも言わなくて、

「もういいよ……。用事も済んだし、私そろそろ帰るね」

そう言って席を立ち、歩き出そうとした。

歩き出そうとしたのに……。

「……っ」

私の手が、温かい何かにグッと掴まれたんだ。

どくん、

「ごめん」

どくん……。

「もうちょっとだけ、話聞いて」

心臓が、うるさい。

私の手を掴んだのは、温かくて大きな宮崎航太の手で、1度は落ち着いた私の心臓が、またドクドクと何かを主張し始める。

「話ってなに?」
「……うん」

また小さな沈黙。

すると、宮崎航太は下を向いたまま――私の手を掴んでいない方の手で――自分の髪の毛をくしゃりとつかんだ。

柔らかそうな、ちょっと癖っ毛の髪。

それに一瞬気を取られた私の前で、小さく溜め息をつくと、

「俺、ホントにガキくせー……」

ポツリと、そんな言葉を吐き出した。

ガキ、くさい?

「え?」

私の声に反応したのか、顔を上げた宮崎航太は、そのまま真っ直ぐ私の瞳を見据えて……

「好きだ」

戸惑う私に、そう言葉を続けた。