きせき


「で?」

人目につきにくい、街灯の下のベンチに腰を下ろした私たち。

「え?」

「あんなとこで何してたの?」

「あー、実はさぁ――……」

こうなった経緯を手短に話す私に向けられるのは、航太の呆れた眼差し。

「はぁー……」

挙句の果てには、特大のため息まで吐かれる始末。

「そんな目で見ないでよっ!! だって、時計ないと困るし……」

慌ててそう口にした瞬間、シャツの袖を捲った航太が、腕に着けていた自分の時計をパチリと外した。

「腕出して」

「え?」

戸惑う私の腕を何も言わずに掴むと、その手首に、まだ航太の温もりが残るそれを巻いたんだ。

「それ、付けてて」

トクン。

「……いいの?」

「おー」

「航太は?」

「どうせ試合中は外してるし」

「そっか……。ありがとう。お借りします」

「どうぞー」

なんだか恥ずかしくなって俯く私に、航太は「そういえばさ」と、何かを思い出したように笑って声をかけた。

「さっきの兄ちゃん、」

「うん?」

「ブラジル人のくせに、日本応援してんだってよ」

「えっ? そうなの!?」

「らしいぜー」

「あー! だから“コウタ”だの“ジャポー”だの言ってたのかっ!」

「……おー」

「ん?」

急に私に驚いたような視線を向けた航太に、首を傾げる。

「いや、それくらいは聞き取れるんだなぁーと思って」

「はぁっ!?」

「だって、あの理解してなさは酷いだろ」

そう言って「くくくっ」と楽しそうに、というか、バカにしたように笑ったんだ!!