きせき


「はぁー……。ビックリしたぁ」

去っていくその背中に、思わず漏れた安堵のため息。

「ごめんね、航太。ありがとう」

そう言って見上げた航太は、明らかに不機嫌な顔。

そして、わざとらしく大きく息を吐き出す。

「何してんの?」

「……」

想像していたよりももっと怒っていたらしい航太に、何も言えず口をつぐむ。

「なぁ、聞いてる?」

「……ごめんなさい」

「“ごめんなさい”じゃねぇだろ?」

「……うん」

「あいつが何言ってたか、わかってたの?」

「早口すぎて……よくわからなかった」

私の返事に、彼がまた大きなため息を吐いた。

「“君に一目惚れしたんだ!”、“ゴハン行こうよ!”」

「え?」

「あいつ、そう言ってたんだよ」

「は?」

「ナンパだろ」

さらに不機嫌そうに眉を寄せた航太に、驚きの視線を向けた私の口から漏れ出たのは――……。

「え? 誰を?」

そんな間の抜けた言葉。

「美青の他に誰がいるんだよ……」

「……」

項垂れながら、呆れたように発せられた彼の言葉に、私は何も言えなくて。

そんな私を、もう一度ジロリと睨んだ航太は、次の瞬間、困ったように笑って言ったんだ。

「あんま心配かけんなよ」

その表情にこっそりキュンとしながら、何度も航太に謝った私は、“絶対一人で行動するなっ!!”と、ゲンナリするほど念を押された。