「あ゛ぁーー!!」
いつもあまり外に出ないせいか、夜に部屋に戻った頃には、意外と疲れていて。
だけど、そんな疲れを感じさせないくらい大きな私の叫び声が、この部屋には響いていた。
「やだー……。どうしよう」
涙目の私の手の平の上にあるのは、お気に入りの腕時計――の残骸。
「何でこんなことにっっ……!!」
――時間を巻き戻すこと、数十分。
お風呂に入る準備をしていた私は、腕時計を外して、自分のポケットにポトリと落とした。
それが、今回の大惨事の原因。
「あーもー、ホント最悪だ……」
お風呂に入って、スッキリした私の頭からは、ポケットに落とした時計のことまでスッキリ消し去られていて。
脱いだ服をトランクに投げ入れて、何も気にせずそれを閉じたんだ。
その瞬間、“パキッ”という嫌な音が、静かな部屋に響いた。
何事かと視線を落とした私は、思わず大絶叫して、適当すぎる自分の性格を心底恨んだ。
再び開けたトランクの、ちょうど折りたたまれる部分にあったのは、粉々に砕け散ったガラスと、時計の文字盤で。
「ありえない……」
そう言ったところで、もう時計が元に戻るわけもなく。
でも、持ってきた時計はこれだけだし……。
チラリと目を向けた部屋の時計は、夜の8時前を指している。
「まだどこかで買えるかな?」
小さく呟いた私は、カバンとお財布を手に、急いで部屋を飛び出した。

