きせき


実家でまったりしてしまったせいで、結局帰るのは夜になってしまった。

見上げた夜空には星がチカチカと瞬いていて、大きな月がぽっかりと浮かぶ。

「そうだ」

小さくそう呟いて、カバンからスマホを取り出した私は、あけちゃんの名前を呼び出して通話ボタンを押した。

「もしも~し!」

四回目のコールの後、あけちゃんの元気な声が耳に届いた。

「もしもしー? 美青だけどー」

「わかってるよ~。どうしたー?」

「あけちゃん、」

「ん? なになに?」

「ありがとね」

「……」

「航太も、“ありがとう”って」

「え?」

それだけでも、彼女はきっとわかってくれると思うけど。

「あけちゃんのおかげで、やっと前に進めたよ」

「……」

「いっぱい心配かけちゃって、本当にごめんね」

あけちゃんの家はスマホの電波の入りがあまりよくなくて、通話の途中で切れてしまうことが時々ある。

だから、何も言葉を発しなくなったあけちゃんに、切れてしまったのかとスマホの画面を覗き込んだ。

だけどそこには、ちゃんと通話時間を刻む数字が並んでいる。

「おーい!! 聞こえてる?」

「聞こえてるよー……」

やっと私の耳に届いたのは、鼻をすする僅かな音と、あけちゃんの鼻にかかったその声で。

「泣かないでよ」

クスッと笑ってそう言うと、あけちゃんも同じように笑いながら言ったんだ。

「泣かせないでよー」

「うん、ごめんね。でも、もう大丈夫だから」

「本当に?」

「嘘ついてどうするのー」

「そうだけど……何か、夢みたい」

「それ、多分私が言うセリフだし」

「あぁ、しまった!! そっか!!」

また笑い合った私達は、後日会う約束をして電話を切ったんだ。