きせき


「ただいまー」

「あれ!? おねぇーだっ!! 何で帰って来たの?」

「……自分の実家なのに、帰って来ちゃダメなの?」

あの後、航太の家を出た私は、せっかくだからと自分の実家に立ち寄った。

なのにっ……!!

玄関を開けてリビングに入ると、前髪をちょんまげにした何とも色気のない、ジャージ姿の美月に出迎えられ。

何とも思いやりのない言葉をかけられた。

「せっかく韓国土産を買ってきたのに」

不貞腐れる私のその言葉に、過剰に反応した美月。

「おねぇー! お帰りぃー!」

「……」

この子は一体、誰に似たんだろうか。

溜め息を吐きながら、カバンの中身をガサガサ漁って、韓国で発見した可愛いポーチを美月に手渡す。

「いや~んっ! 可愛いっ!! ありがとー!」

「はいはい。お気に召していただけて何よりですわ。……あー、そう言えば」

「んー?」

棒読みで彼女へのお返事をしたあと、こちらを見向きもせず、あげたポーチの中に“何を入れよう!?”と、悩む美月に声をかけた。

「航太から伝言」

「えぇっ!! 航太クン!? なんでっっ!?」

――そうなんだ。

玄関で“一度実家に寄ろうと思う”と告げた私に、航太は……

「じゃー、美月さんに伝言頼んでいい?」

そんなことを言ってきたんだ。

さっきまで夢中だったポーチを放り投げた、自由の化身・美月が、ものすごい勢いで私に向き直る。

「“なんで”って、私が聞きたいよ」

「なに!! ねぇ、何て言ってたのっ!?」

「“嫌いになったことなんか、一度もないですよ”だって」

「……」

それを聞いた途端、美月はさっきまでの勢いが嘘のように、目を大きく開けて静かになってしまった。

「あと、“遅くなってスイマセン”だって。ねぇー、どういう事? なんの話?」

“意味がわからないんだけど”と付け加えながら首を傾げ、視線を美月に戻した私の目に映ったのは、

「――……っ」

「えっ!? なにっ!? 何で泣いてんの!?」

なぜかボロボロと涙を流す彼女の姿で……。