きせき


「ホントは、雨が苦手」

一瞬閉じた瞼の裏に、あの日の航太の表情と、色を失った瞳が浮かぶ。

「嫌なことがある日は、いつも雨が降ってたの」

航太に心配をかけたくないと思うのに、こうして心の中を曝け出してしまう私は、なんて弱いんだろう。

ごめん、航太。

ごめんね。

私に、こんなことを言う資格なんかないのにね。

――もうこの話は終わりにしよう。

「だから、雨はちょっと苦手」

ほんのちょっと笑いながら、そう口にした瞬間、ゆっくりと私の方に向き直った航太。

「――……っ」

見ないで。

だって私は、こんなにも弱い自分が嫌いなの……。

逃げるように瞳を逸らす私に、躊躇いがちに航太の腕が伸ばされて、

「ごめん……」

そのまま、私を優しくそっと包み込んだ。

「……っ」

胸がすごい力で締めつけられて、息が一気に苦しくなる。

「美青が寝るまで……」

頭上で優しく囁かれるその言葉に、視界が滲んで涙が零れそうになった。

航太……。

いま口を開いたら、絶対に泣いてしまう。

でも、そんなの嫌だから――……。

唇を噛んで、言葉を呑み込む私に、

「……離した方がいいなら、離す」

航太はポツリと、そう呟いた。

違う。

違うの。

やっぱり溢れ出てしまった涙を、何とか飲み込んだ私は、どうしても航太にこの気持ちを伝えたくて。

ただ頭を、左右に振った。

航太。

もう、離れたくないよ。

私はあなたのことが、こんなに大好き――……。