きせき


寝室に入り、私が捲ったままになっていた布団をさらに大きく捲り上げ、

「寝相の悪い美青は、奥にどうぞ」

そんな失礼なことを言いながら、私がベッドに上がるのを待つ航太。

私のドキドキになんて、絶対に気付いてないんだろう。

「……どうもっ!!」

ちょっとプリプリしながら布団に潜り込むと、“くくくっ”と笑った航太もそれに続く。

“何もする気が起きない”

そう言ったのに、妙に空けられている二人の間の距離。

仕方がないとわかりながらも、やっぱりちょっと淋しいと思ってしまう私は、ダメなのかな?

「おやすみ」

優しい声でそう言った航太に、私も“おやすみ”と返事をする。

「……」

さっきまでは、あんなにも耳障りだった雨音が、今はほんの少し小さく聞こえるような気がする。

それってやっぱり、航太が隣にいてくれるから?

それでも、なかなか寝付けないことに変わりはなくて……。

壁側からゆっくりと寝返りを打った私の目に映ったのは、反対側のドアの方を向いて眠る航太の背中。

“もう寝た?”

そう声をかけようとした瞬間、その背中が小さく揺れて、

「寝れそう?」

そんな声が聞こえてきた。

「うん、多分ね~」

航太に聞こえないように、静かに唾を呑み込んで。

動揺を悟られないよう、そう答えた私の耳に、

「そっか」

航太の安心したような声が聞こえる。

小さく震える呼吸。

大丈夫、眠れる。

大丈夫――……。

自分に言い聞かせるように、心の中で何度もその言葉をくり返す。

そんな時、小さく聞こえた雷鳴に肩が震えたんだ。

航太はそれに気が付いて、私が震えていると勘違いしたのか、“寒い?”と尋ねてきて。

「ホントは……」

――あぁ、やっぱりダメだ。

一人で耐えようと思っていた私の口から、言葉が零れ出てしまった。

「え?」

向こうを向いたままの航太が、少し驚いたように返事をする。

そのままこっちを向かないで――……。