きせき


寝室に入った私に、しっかり休めと言って、扉を閉めた航太。

本当はもう少し傍にいて欲しかったけど、どこまで甘えていいのかわからない。

“境界線がわからない”

そう言った航太の言葉を思い出した。

それに――……

“美青に触れたくてしょうがない”

航太の少し掠れた声が、耳から離れないんだ。

驚いたけど、素直に嬉しいと思った。

“航太に触れて欲しい”

そんな風に思っている自分がいるのも事実で……。

「ホント難しいね」

小さく呟いた私は、ゆっくりと布団を捲り上げ、ベッドの上に横たわって目を閉じた。

――でも。

「……やっぱりダメだなぁ」

さっきまで航太の隣にいた時は、心がポカポカして眠れそうだったのに。

一人になるとやっぱり上手く寝付けない。

――こんな雨の日は、特にそう。

頭まですっぽりと布団をかぶっても、降りしきる雨の音がザーザーと耳に届いて、胸がざわつく。

眠ってしまったら、目を覚ました時に、さっきまでのことが全部なかったことになっていて、また航太を失ったあの頃に戻っちゃうんじゃないかなんて……

今日は、そんな考えまで頭に浮かぶ。

目をぎゅっと閉じて、何度も寝返りを打って。

意識を違うところに持っていこうと思うのに、なかなか上手くいかない。

「はぁー……」

溜め息を吐いて、頭までかぶっていた布団を捲り上げると、そこにあるのは、当たり前だけどベッドに入る前と同じ、真っ暗な空間。

だけど、さっきと一つだけ違う。

「あれ?」

起き上がった私の耳に、小さな歓声が聞こえた。

ベッドから立ち上がり、リビングに続く扉をそっと開く。

私の目に映ったのは、電気の消された暗い部屋の中、ぼんやりと光るテレビを真剣な顔で見つめる航太の姿だった。

「……」

その姿に、

瞳を奪われる。

これは“サッカー選手”の航太の顔だ。