「この時は、出ようか出まいか、一瞬迷ったんだ。多分1、2秒なんだけど」
「うん」
「そういう時は、大抵上手くいかない」
「1、2秒で?」
「あぁ。ボールのスピードがあんなんだからな。1、2秒でも判断が遅れるともう合わなくなる」
「そっか……」
「せっかく仲間がいいパスをくれても、それを感じ取って、予測しながら動かないと間に合わない」
「……」
「代表は、良く言えば“選抜”だけど、悪く言えば“一時の寄せ集め”だから。意志の疎通が結構難しいんだ」
「そっかぁ。そうだよね。普段はみんな、全然違うチームなんだもんね」
「だな」
「私はこのチームしか知らないから……。なんか、変な感じ」
その後も、ポツポツと自分がその時何を感じていたか、何を考えていたかを話す俺の言葉に、美青は何度も頷きながら聞き入っていた。
しばらくして、試合も後半の半ばにさしかかった頃、
「航太は、いつも試合の後にこうして確認してるの?」
突然、俺に向けられた質問。
「あー、そうだな。中で見るのと、外から観るのはやっぱり違うから」
それはもう、俺にとっては試合とセットになった習慣だった。
「……」
「ん? なに?」
画面を眺めていた俺は、隣から視線を感じて美青に目を向ける。
「やっぱり凄い」
「え?」
「航太、昔からそうだったよね。絶対に自分に驕ることがなくて、前を向いてて」
「……」
「それに、昔よりも、もっともっと面白い」
それだけを口にすると、視線を再び画面に戻してしまった。
「“面白い”?」
「うん。航太のプレー、わくわくする」
「……」
「もちろん昔もそうだったけど――今は、昔よりももっと」
言葉の意味がきちんと理解できていなかった俺に、美青はそう言って優しく笑った。

