「あー、タオルと着替え必要か……」
美青と別れた時、美青は一切の物を残さずにこの部屋から出て行った。
それももう何年も前のことだし、当然彼女の着替えなんてあるはずもなくて。
「ん~……」
自分のクローゼットを漁りながら、美青が初めてここに泊まりに来た日のことを思い出して、やっぱり手に取ったのは俺のスウェット。
ちっちゃな美青が、そのスウェットをダボダボ着ている様子が、本当に可愛くて仕方がない。
美青はバカにされてると思ってキレるけど。
洗面所のドアを軽くノックして、美青がそこにいないことを確認した後、タオルと着替えを置いて再びリビングに戻る。
さて、どうしたもんかなぁ……。
「……」
そういや、泊まるのか?
ふと湧き上がった疑問。
帰るのであれば、着替えは韓国に持って行っていた物があるはず。
……ってことは、スウェットも必要なかったかもなぁ。
そう思って、ちょっと残念な気分になった時、
「お先に……頂きました」
妙にかしこまった美青の声が聞こえて、振り返った俺は思わず笑ってしまった。
相変わらずちっちゃな美青は、俺のスウェットにすっぽりと包まれていて、不機嫌そうに唇を尖らせる。
「美青、」
そう呼びかけた俺を、やっぱり不貞腐れていたらしい彼女が、迫力のない瞳で睨みつけた。
ただ可愛くて、すぐに帰るつもりのないその様子に、嬉しくなって笑っただけなのに。
自分の服じゃなく、昔みたいに俺のスウェットに着替えてくれたことが嬉しくて、ついつい頬が緩む。
――まぁ、美青の場合は着替えを持ってることを忘れてるっていう可能性もあるけど。
俺のそんな気持ちに気付くはずもなく、ただただバカにされていると思っている美青は、俺にさっさと風呂に行けと言い放ち、勝手に冷蔵庫を開ける始末。
でも、それさえも嬉しいんだ。
まるで昔に戻ったようで、俺は笑いながら風呂に向かった。

