「はぁー……」
真っ白な湯気がモクモクと立ち込めるバスルームで、私は盛大な溜め息を洩らす。
「またハメられた。絶対に」
お湯に顔を半分沈めて、ぶくぶくと息を吐き出した。
航太はいつだって私に気を遣わせることなく、私を優先させる方法を知っていて。
「悔しいなぁ……」
航太といると、自分の方が年上だということを、すっかり忘れてしまいそうになる。
「航太も待ってるし、早く出なきゃ」
独り言を呟いてバスタブから上がり、洗面所に出た私の視線の先には、いつの間にか用意されていた、新しいタオルと着替え。
でも。
「また笑う気だな」
クスッと思い出し笑いを一つした私は、温まった身体にその着替えを纏い、ゆっくりとリビングの扉を開けた。
「お先に……頂きました」
そう言って、航太に視線を送ると、
「くくくくっ!」
案の定、彼は肩を震わせて笑っている。
「美青、」
「はいはい、どうせちっちゃいですよ。ペンギンみたいですよっ!!」
不貞腐れて唇を尖らせた私を見て、とうとう堪えきれなくなったらしい航太が大笑いをし始める。
航太が用意してくれたのは、私が初めてこの部屋に泊まった時に貸してくれた物と同じようなスウェットで……。
「まだ何も言ってねぇし」
そう言いながらも、まだ笑いが収まらないらしい航太は、クスクスと笑い続ける。
「さっさとお風呂入って来てっ!! お水もらうからねっ!!」
プリプリとしながら、昔のように勝手に開けた冷蔵庫。
「はいはい、勝手にどうぞ~」
そんな私の行動を、特に咎めることもせずお風呂に向かう航太の背中を……
私はこっそり、涙目で、だけど嬉しくて嬉しくて、微笑みながら見送ったんだ。

