「なんか懐かしいな」
駅からの帰り道、ほんの少し前を歩く航太がそう呟いた。
――あの頃、いつも二人で歩いていたこの道。
昔のように、航太の手に指をからませたくなって……思わず俯く。
「あ……」
俯いていた私が上げた視線の先には、空を見上げる航太の姿。
「え?」
「雨」
航太がそう口にしたのとほぼ同時に、ポツポツと降り出した大粒の雨。
灰色の空から落ちてくる雨粒は、どんどんその数を増やしていって、あっという間に土砂降りになってしまった。
「すげ……。スコールみてぇ」
慌てて近くの空き店舗の軒下に逃げ込んだ私たちは、いつ止むかもわからない、その雨を見上げていた。
隣を見ると、雨に濡れた髪の毛を鬱陶しそうに後ろに流す航太がいて。
その姿に、急に鼓動が速くなる。
「……っ」
視線に気付いた航太が、急に私にその目を向けるから、そんなことをする必要もないのに、何だか恥ずかしくなってしまって視線を逸らした。
――でも、こんなの不自然すぎるよね……?
おずおずと元の位置に視線を戻すと、そこには困惑顔の航太が視線を上に向けていて、着ていた上着を脱ぐと、それを私の肩にパサッとかけたんだ。
「え?」
驚いた声を上げた私に、特に何も言うこともなくまた空を見上げた航太。
「航太、風邪ひいちゃうから」
そう言って、かけてもらった上着を脱ごうとすると、
「いいから、着てて」
視線はそのままで、そんな風に却下されてしまう。
「でも……っ」
食い下がる私に、航太は溜め息を吐きながら視線を落とし、
「目に悪い」
不貞腐れたような表情で、よくわからない言葉を口にした。
「え!?」
目に……悪い!?
一瞬、本当に何のことだかわからずムカッとしたけど……
視線を下に落として、納得した。
「ごめん。……ありがと」
「おー……」
真っ白なシャツが雨に濡れて、薄らと透ける素肌。
一応キャミは着てるけど……。
無性に恥ずかしくなって、借りた上着の襟元を手でギュッと合わせる。

