きせき


「そういや、引っ越したんだな」

「え?」

電車に揺られながら、真っ暗になった外の風景をぼんやり眺めていた美青に話しかける。

「さっき、I駅って」

「あー……うん。日本に戻ってから、会社の近くに」

「そっか……」

本当は美月さんにそのことは聞いてたけど、あの頃のことを蒸し返すのが少し躊躇われて、そこから何も言えなくなった。

「でもね、今日は実家に行こうかな」

「え?」

そんな俺を、美青は頭一つ以上低いところから見上げて、

「そしたら、航太と同じ駅で降りられるでしょ?」

ちょっといたずらっぽく笑った。

「お前、わざとやってんだろ?」

「はぁ? なにがぁ~?」

「……」

絶対にわざとだ。

「でも、楽しいね」

さっきまでの表情を一変させて、ふわっと笑う美青。

きっとこれは、本気。

ってゆーか、無意識。

「……」

美青は、いつもこうやって俺の心を簡単にかき乱す。

だけど今は、それも悪くない。