きせき


「でもっ、えぇっとぉ……」

なかなか引かない稜にタジタジの美青は、俺に助けを求めるような視線を送ってくる。

はぁー……。

「稜」

「ん~?」

「佐々木さん、困ってるし。てかお前、今から練習すんだろ?」

「あー……、そうだったぁ」

「ここで下心出して、次あんなミスしたら――……」

「はい。ごめんなさい。練習行きます」

ものすごいスピードで反省したらしい稜は、くるりと美青に向き直った。

「ごめんねぇ、美青ちゃん。航太怖いし、俺やっぱり練習行くわー。今度は送らせてねぇ!」

「えっと、お気持ちだけで……」

両手の平を稜に向けた美青に、稜はいじけたように唇を尖らせて。

「あー、でももう遅くて危ないから、どうせヒマだろう航太に送ってもらうといいよ。そいつ無害だから」

眉間にシワを寄せながらそう言うと、困惑する美青にまた手をブンブン振って、勝手気ままに帰って行った。

「……」

「……」

稜の無責任な発言のせいで、微妙な空気が流れる。

「帰るか」

「でも、まずいんじゃない?」

美青はほんの少し周囲を気にするように、キョロキョロと周りを見回した。

「へーきだろ。みんなもう帰ったし、俺は稜に頼まれただけだし?」

「……」

「無害らしいし」

それに、プッと噴き出した美青は、

「じゃー行こっか」

ちょっとだけ嬉しそうに頬を緩めて、ゆっくりと歩き出す。

ほんの少し開いた“仕事仲間の距離”を保って――……。