きせき


・・・
・・・

韓国での遠征を終え、帰国した俺達。

「あ~あぁ……」

隣には、珍しくテンションの低い稜。

「しょうがねぇって」

「だってさぁ、1点は確実に俺のミスだし」

「終わったことウダウダ言うくらいなら、今からグラウンド行って練習して来いよ」

「う~ん。そうすっかなぁ……」

普段アホみたいなことばっかり言っているけど、本当は努力家の稜。

こういうところがあるから、こんな男に俺はつい一目置いてしまう。

――ワールドカップ前の最終戦。

韓国に1-2で負けた俺達は、重たい気持ちで空港のロビーを歩いていた。

「航太は~? 今から練習すんの?」

「いや、ちょっと腿張ってるし。今日は帰るわ」

「そっか~……っと、美青ちゃーーーん!!」

「……」

おい。

さっきまでの低いテンションは一体どこへ行ったのか。

稜は美青を見つけると、満面の笑みで手を大きく振りながらその名前を呼んだ。

何だっけかなぁ。

コイツのこういうところを見ると、それが何かに似ていて……。

あ、わかった。

……バウだ。

コイツの美青への懐き方は、いつも尻尾をブンブン振り回しているバウそのものだ。

もちろん俺がそんなことを考えてるなんて、知るはずもない稜は、ゆっくりと近寄って来た美青に嬉しそうに――見えない尻尾を振りながら――話しかける。

「美青ちゃん! お疲れ様ー!」

「川崎君も、お疲れ様です」

そう言って、小さく笑う美青。

「試合負けちゃってごめんねぇ……。せっかく、美青ちゃんのために勝とうと思ってたのに」

「ダメですよ~。そんなこと言ったら、私が川崎君のファンに睨まれちゃいますから」

社会人らしく、美青に上手くあしらわれた稜は、そんなことを気に留める様子もなく話し続けていて……。

「あっ! そう言えば、美青ちゃんって家どの辺なの?」

突然そんな他人には話さなくてもいいであろうことを聞き始めた。

「えっ?」

「家! 美青ちゃんの家!」

「えぇっと……I駅の方?」

「へぇ! I駅の北口? 南口? 俺、通り道だから送ってくよ!!」

挙句の果てには、そんなとんでもないことを言い出しやがった。

「あ~、でもほら! 疲れてるのに申し訳ないので」

遠回しに断る美青をオール無視する稜は、

「大丈夫、大丈夫~!」

なんて、一人で上機嫌。