「いつもこんな時間にすみません」
「いや、別に平気だよ。何かあったんだろ?」
開口一番で謝罪の言葉を口にした俺を、笑いながら部屋に招き入れた多田さんは、やっぱり俺よりも大人だと思った。
「美青のことで」
「あぁ」
「多田さん、」
真正面に座る多田さんの視線に緊張しているのか、唾を呑み込んだ喉が、ゴクリと音を立てる。
「違ったらすみません」
「……」
「多田さんは、ホントは今でも美青のことが好きなんですよね?」
真っ直ぐにその目を見据え、そう口にした俺から視線を逸らすこともせず、
「あぁ、好きだよ」
多田さんは、ハッキリとした口調でそう答えたんだ。
わかってたことだけど、ここまでハッキリ言われると、やっぱりこたえる。
「で、それを聞いてどうするの? 美青を俺に譲る?」
「それは……無理です」
「だろうな」
「ただ――……」
「……」
俺の言葉の続きを待つ多田さんは、頬杖をついたまま、少しだけその首を傾げた。
「俺だけ気持ちを伝えて、フェアじゃないと思ったんです。美青は、多田さんの気持ちに気付いていません」
「それはそうだろうね」
「でも多田さんは、ずっと美青が好きだったんですよね?」
「……」
別にキレイごとが言いたいわけじゃない。
ただ、憧れを抱いてしまうほどに真っ直ぐなこの人が、どんなに美青を想っているのかを知ってしまったから。
「二人が、お互いを嫌いになって別れたんじゃないっていうのは知ってます」
「そう」
「だから――」
「“だから、気持ちを伝えた方がいい”、“同じ土俵に上がって、美青に選んでもらおう”って?」
「……っ」
俺の言葉を遮った多田さんの声は、初めて聞く、少しの怒りを含んだ声だった。
「宮崎君」
「は……い」
「それって、余計なお世話ってやつだよ」
多田さんの、当然ともいえる一言に息を呑んだ俺は、言葉に詰まって何も言えなくなってしまった。
だけど、そのまま俺の目をしばらく見つめたあと、多田さんはなぜかフッと笑ったんだ。

