きせき


「はぁー……」

部屋に戻った俺の口から漏れるのは、超特大のため息。

あれから美青は、つい我慢できずにキスをしてしまった俺に、

「航太ばっかりずるいっ!!」

と、唇を尖らせて嬉しそうに笑った。

あんな顔されたら、我慢できなくなるのが男ってもんで……。

瞳を見つめながら、その髪を撫でた俺。

驚いて目を見開いた美青に、ゆっくりと顔を近づけ、もう一度キスをしようとした。

瞬間――……

「……」
「……」

俺の口を両手で押さえた美青。

「ストーップ」

「……」

「これ以上はダメです」

そう言って笑うと、

「私だって我慢してるんだからねっ!!」

顔を隠すためか、ちょっと恥ずかしそうに俺にギュッと抱きついてきた。

それは……逆効果ってやつだろ!?

言ってることとやってることが違いすぎる!!

すると美青はパッと顔を上げ、頭の中のモヤモヤと戦う俺に、

「うん……。でも、嬉しかった」

そう言って、柔らかい笑顔を向けたんだ。

「くくくっ!」

変わらないその無邪気さに、笑いが込み上げる。

「えぇっ!? 今の笑うとこじゃないよね!?」

「普通に笑うとこだろ」

「えっ!! 絶対違う!!」

「いや、だって実際笑えたし」

「はぁっ!?」

まるで昔に戻ったみたいで、嬉しくて。

こんなくだらない言い合いでさえ、楽しくてしょうがない。

――だけど。

「さて。そろそろ戻るか」

「……」

俺の言葉に、美青は言葉に詰まったように黙り込み、一瞬視線を足元に落とした。

「……美青?」

「うん、大丈夫」

「……」

「ねぇ、航太?」

「んー?」

「やっぱり……もう一回だけ」

「……」

「もう一回だけ、キスして?」

そんな言葉と共に俺を見上げた美青。

俺は絶対に、お前の方がズルいと思う……。