きせき


遠征のため、韓国に旅立つ日。

空港のロビーで、航太を見つけた。

隣の川崎君に、不機嫌そうな顔を向けているけど、本当はちょっと楽しそうな航太。

――あぁ、そうなんだ。

目を逸らさないで、しっかり前を向いていたら、こんなにもいろんなものが見えていたんだね。

航太のその表情にさえ嬉しさが込み上げて、緩む頬を隠すように少し下を向いた。

「お~い、美青ちゃ~~ん!! お疲れ~!!」

少し離れたところから聞こえる、いつも通りの川崎君の声に顔を上げた私は、真っ直ぐ前を向いて。

ゆっくり一歩、踏み出した。

まだ、ほんのちょっとだけぎこちないかもしれないけれど、

「こんにちは」

そう言って笑ってくれた航太に、きちんと笑顔を返したい。

「こんにちは、宮崎君」

私のその言葉に、目の前の航太は一瞬フッと笑う。

「佐々木さんも、行こう」

“佐々木さん”

私をそう呼んだ航太の、その真意をわかっている私たちは――……。

きっと、もう大丈夫。