「航太ぁ。なぁーなぁー! 航太ってばよ!!」
「……」
「シカト? あれ? また不機嫌?」
「稜さ、」
「あっ! 喋った!! 航太、ゲーム持ってきた!? 狩ろうぜ!! 一緒に雌火竜狩ろうぜ!!」
「……うるさい」
何でコイツはいつもこうなんだ?
コイツにテンションの低い時はないのか?
今日も空港のロビーで出国待ちをしている間、なぜか稜は俺の隣でギャースカギャースカよくわからない竜だのピンクの猿だのの話をしていて……。
「……」
――あ。
「あっ、美青ちゃんだっ!!」
俺より少し遅れて、稜が美青を見つける。
「お~い、美青ちゃ~~ん!! お疲れー!!」
ブンブンと手を振る稜に気付いた美青は、カラカラとスーツケースを引きずりながら近寄ってきて、
「こんにちは、川崎君」
いつものように笑顔で挨拶をする。
そのままゆっくりと、その視線を俺に向ける。
ちょっと躊躇いながら。
でも、この前までの気まずい視線じゃないのは、きっとあけちゃんからことのすべてを聞いたからなんだろうと思う。
「こんにちは」
小さく口元を緩めて挨拶をした俺に、一瞬目を大きく開いた美青は、少し微笑んで。
「こんにちは、宮崎君」
柔らかい口調で、そう言ったんだ。
“宮崎君”
前まで引っ掛かっていたその言葉も、その裏に隠された真実を知ってしまえば、何ともない。
「あぁっ!! 航太が笑ってる!! 女に笑いかけたっ!! マジでか!?」
「うるせぇよ、ばーか。くだらねぇこと言ってないで行くぞ」
うるさい稜の頭を叩き、
「佐々木さんも、行こう」
振り返ってそんな言葉をかけた俺に、少し驚いた顔をした美青は、次の瞬間にはにっこりと笑って。
「そうですね。行きましょ!」
小さな体には不似合いな、大きなスーツケースを引いて歩き出した。
きっと俺達は、ここからまた始められるはず。

