――数十分後。
「どういうこと?」
兄貴が部屋に入ってくるなり、そう言葉をかけた。
「どういうことって?」
“ワケがわからない”
そんな表情で俺を見つめる兄貴。
「お前、美青になに言った?」
「美青ちゃん?……航太。ちゃんと説明してくんねーと、何の話だかわかんねぇだろ」
自分のしでかしたことを棚に上げて溜め息を吐く兄貴に、苛立ちが増す。
「あの時……協会に、なに言われたんだよ」
「……っ」
俺のその言葉を聞いて、あからさまに表情を変えた。
「協会に、美青と俺を別れさせるように言われたんだってな?」
「……航太、どこでそれを?」
「“どこで”じゃねぇよっ!! んなことはどーでもいいだろーが!!」
「航太」
「てめぇ、何考えてんだよ!!」
怒鳴り散らしながら胸倉をつかんだ俺に、兄貴は何も言い返さない。
それどころか、まるで何かを覚悟しているかのように、真っ直ぐな瞳で俺を見据えていて……。
「自分が何したか、わかってんのか?」
「……」
「黙ってねぇで何とか言えよ!!」
怒りの収まらない俺の、胸倉を掴んでいた手をスッと避け、兄貴はポツリと言葉を落としたんだ。
「悪かった」
“悪かった”だと?
それで済むと思ってんのか?
睨みつける俺と、視線をぶつけたまま、
「航太にも美青ちゃんにも、申し訳ないことをしたと思ってる」
そう言うと、もう一度“すまなかった”と言って、頭を下げた。
「航太」
兄貴の静かな声が、広すぎる部屋に響く。
「昔のことは、もうやっちまったことだから……。今更言い訳も何もない。でも、もうあんなことはさせない」
「……」
「美青ちゃんのことは、ちゃんと守る」
バカみたいに真っ直ぐな瞳で、俺を見据えてそう言った。

