きせき


「何で兄貴が、そんなこと……」

握りしめた拳にグッと力がこもる。

「ち、違うの!!」

「……」

「お兄さんは……確かに、そうなんだけど……でもっ」

あけちゃんは必死に何かを説明しようとしているけど、兄貴が美青にその話をしたのは紛れもない事実で。

「ごめん、あけちゃん」

「え?」

「一人で帰れる?」

「……」

「一人で平気?」

俺の突然のその一言に、反応できなかったあけちゃんは、二度目の問いかけで戸惑いながらも小さく頷いた。

「ごめん」

そう言って足早に公園の出口に向かおうとした俺に、あけちゃんが慌てて声をかけた。

「待って!! まだ……話、終わってない」

小さくそう呟き、また話しづらそうに顔を顰めながら俺を見つめる。

まだ何かあるのか?

「……」

無言になった俺に、あけちゃんはすごく悲しそうな顔をして、

「また協会に同じことをされそうになった。航太君と付き合ってたから、今回の仕事外すって……」

そう告げたんだ。

「な……に?」

何だよそれ。

いつの話だ?

「この前トーゴから帰った後、美青……本部に呼ばれて」

「……っ」

ギリギリと拳を握る指の爪が、手の平に食い込む。

「ユースの高橋とかいうヤツが、会長に昔の二人のことを報告したって……」

――高橋。

その名前を聞いて思い出したのは、いつも上の人間の視線ばかりを気にして、自分の株を上げることだけに必死だったその姿だけ。

何で、今更あんなヤツが……。

「で、でもね!! それは航太君のお兄さんが止めてくれたって」

兄貴――……。

それでもやっぱり。

「悪い、やっぱり行くわ。話してくれて、ありがと」