「ねぇ、あけちゃん?」
「ん~?」
「私、仕事辞退しようかな……」
仕事が終わったあと、いつものようにあけちゃんの部屋に駆け込んだ私は、ポツリとそう呟いた。
「はぁ!? 何でそうなるのよっ!!」
「だって、このままだと肩を持ってくれたお兄さんにも迷惑かけちゃうかもしれないし」
「あのお兄さんは、そんなの承知の上で阻止してくれたに決まってるでしょ!?」
「……」
――そうなんだ。
きっとお兄さんは、まだあの時、私にしたことを気にしている。
“美青ちゃんの味方だ”
そう言ってくれたお兄さんは、何があっても私を守ってくれると思う。
だけど――……。
「はぁー……」
思わず大きな溜め息を吐いた私の頭を、あけちゃんは丸めた情報誌で“スパコンッ!”と叩いた。
「これ以上、うちの部屋の妖精さんを葬らないでよ!!」
「……」
その上、私よりも妖精さんの心配をする始末。
「ちょっと考える」
「美青~……」
「だって、もちろん悔しいけど、私はこの仕事を外されても会社の仕事があるでしょ?」
「……」
「でもお兄さんの居場所はあそこで、お兄さんがいないとみんなが困るの」
それは、紛れもない事実。
「でも航太君は? また離れちゃうんだよ?」
そう言ったあけちゃんの言葉に私は俯いて、膝の間に顔を埋めた。
「わかってる。きっとここで航太と離れたら、もう逢うこともなくなると思う」
「だったら――……」
「でももし、百万が一、また航太と付き合える日が来ても……昔あったことも、今日のことも話せなくて、心のどこかで引っ掛かり続けると思う」
「……美青」
「これからもずっと、“いつまた引き離されるんだろう”って怯えながら過ごすのかなって思うと、すごく怖くなる」
だって、きっとまた同じことが起きてしまったら……。
私はもう、耐えられないだろう。
それに、もう航太のあんな姿は見たくないんだよ。

