まだ雨は降り続いているようで、このコンクリートの建物の中まで、その雨音が聞こえる。
シンと静まり返った会長室の沈黙を破るように、また会長が静かに話を始めた。
「とは言え、私も少し高橋さんの一方的な話で勘違いをしていたようだ」
そう言って、気まずそうに視線を逸らす高橋さんをチラリと見たあと、
「佐々木さん」
ゆっくりと私に向き直る。
「嫌な思いをさせてすまなかったね」
そして、いつもの、のんびりとした優しい口調で、そう言ってくれたんだ。
「宮崎君の言う通りだ。私は、何日間も君たちと過ごしていたのに、二人の関係に全く気付かなかった」
「……」
「勝手を言っているのは百も承知だ。今日私が言ったことは忘れて、また仕事をお願いしてもいいだろうか?」
そう言って、ゆっくりと頭を下げた。
「本当に申し訳ない」
「会長、やめて下さい!!」
慌てて声を上げた私に、もう一度謝罪の言葉を口にして、頭を上げた吉田会長。
それから彼は、宮崎さんにもお礼を言って、帰り際、最後にもう一度私に頭を下げてくれた。
でも、会長の言うことも一理あるのかもしれない。
それは、止まっていた時間をもう一度動かそうとしていた私にとっては、十分過ぎる警告だった。

